コンポーネントケーブル

コンポーネントケーブル

その昔、赤・白・黄のコンポーネントケーブルが、最強のインターフェースの象徴なのではないか?と考えていた。民生機器同士をつなぐインターフェースとしての存在意義が、アナログの電気信号を送受信するための機能ではなく、つなげたい欲求を満たす術を誰しも悟れるように、赤は赤、白は白、黄は黄に挿すことを形状自身が無言で訴えかけている。 ケーブルやコネクターの正式名称や、ケーブルの中を何が流れていようが、つなげたい当事者にとっては知ったことではなく、ゲーム機やビデオなどとTVを単純明快につなぎ、音と映像がTVから出力されると、意識は本来の目的であるコンテンツを消費することに向けられ、ケーブルの存在意義は薄れて機器の裏側でホコリをかぶり、掃除のたびに邪魔者扱いされる。次に日の目を見るのは、部屋の模様替えや引越しの際に大事なものとして再認識されるが、取扱説明書を探す必要もなく、新たな場所でつなげられ、ホコリを被り、邪魔者扱いが繰り返されていた。 しかし、そんな日常にも混乱が訪れ、やがて終焉を迎えていく。

黄端子のみであった選択肢に「D」形状の端子が追加され、つなげたい欲求には、赤・白はそのままで、D端子の規格を把握することを強要した。新しければ新しいTVを買うほど、黄端子の差込口は省かれ、古いゲーム機やビデオなどがつながらず、やむなくインターフェースに、インターフェースをつなげる暴挙に類する、黄端子をD端子につなげるための変換器を必要とした。アナログ(黄)をデジタル(D)に変換するための変換器であれば、有用とも考えられるが、D端子のDはDigitalのDではなく、ケーブルの中はアナログが流れる規格のため、名称による混乱も生じた。 そんな混乱を招いたD端子も、アナログハイビジョン放送の国際規格化の大失敗とともに終焉を迎えていく。

インターフェースはデジタル信号送受信の到来と共に、赤・白・黄を1本のケーブルにまとめたHDMIへ移行し、著作権保護の名もとにアナログインターフェースを駆逐し始めた。古いアナログ機器をデジタル機器につなげられる変換器やTVは変態仕様と呼ばれるようになり、蓄音機から脈々と続いていたアナログインターフェースは、デジタルインターフェースに席巻されている。しかしながら、現状のHDMI規格においても、端子形状の違いが5種類。ケーブルも2種類。さらに規格のバージョンも大きく分けて5種類存在する。つなげたい欲求に対してD端子ほどの混乱はないものの、少なくともつなげる機器の出力と入力の端子形状とケーブルの種類は把握しておく必要がある。cable-300x166.png

テクノロジーの進化と共に、伝送信号や解像度がアップデートされるたびにインターフェースは作り直されてきたが、つなげたい欲求の本質に混乱や強要が含まれるとはとても考えられない。 つなげたい欲求に答えるインターフェースは本来普遍的で、テクノロジーの進化に合わせて右往左往する習性のものであってはならないと考えている。 普遍的なフレームを導き出すのがデザインであり、普遍的なフレームに、時代に即したテクノロジーを選択し続けていく。理想的なインターフェースの構造は普遍的であるべきだと考えている。

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